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2021年2月26日金曜日

【感想】劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンの感動した点について書いていく

 2020年秋に上映されていた劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンについて今更ながら描いてみようと思います。

一度見ただけなので間違っている部分があるかもしれませんがご了承ください。

ちなみに、テレビアニメ版は大体、あとは外伝を視聴済みで、小説の方は読んだことがありません。

※ガンガンネタバレしていきます。ご注意ください。


◇冒頭

公式YouTubeでも公開された部分です。

それまでのを見ていた人にはかなり響いただろうな、という部分。

言うまでもなく感動しました。

死ぬ前に母が娘に送った50年分の手紙があれからどうなったか。

「現在(話の舞台の数十年後?)」が出てきて、それがヴァイオレットたちの世界と繋がっていて、というのが段々種明かしするように描かれていくのは圧巻でした。


◆「電話」の描かれ方

外伝のとき、建設途中の電波塔が出てきて、輝かしい復興の象徴のように思えて感動したのを覚えています。

今回はついに(?)電話がしっかりと初登場。

アイリスが「電波塔が完成したら手紙の代筆業なんてなくなってしまう」と焦っているシーンが出てきますね。

そこから「電話も悪くない」と思うようになるシーンはほろりときます。

今では固定電話すら古い存在になりつつありますが、やはり電話には電話にしかないよさがあると思わされました。


◇働く女性としてのヴァイオレット

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンを一言で言うと、「ヴァイオレットが行方不明だった少佐と再会して(おそらく)結婚する話」となると思います。

他にも色々重要なエピソードはありましたが、軸になっているのはやはりそこかと。

ただそれだけだったらシンデレラストーリー的というか、それほど目新しさを感じないまま終わってしまった気がするのですが、私は他の話にはないよさを感じました。

まずはヴァイオレットの普段の冷静さ。

特に序盤(テレビアニメの方)は過剰なくらい元軍人としてのヴァイオレットが描かれていましたし、人間らしさを獲得していってからもとにかく仕事ができる、そつなくこなすという印象が強いです。

そんなヴァイオレットがたまに感情をあらわにする瞬間にドキッとするんですね。

(ヴァイオレットは無理やり当てはめるなら「デキる無口キャラ」ですが、そういうキャラを主人公にして話を進めるのは実は難しいことなのではないかと思います。凄いです)

それからヴァイオレットのその後の生き方。

はっきりと描かれるわけではないですが、「現在」のシーンが時々挟まれるおかげで、おおよその想像がつきます。

小さな島で暮らして郵便の仕事をし、地元の人に愛され、切手に描かれるまでになる。

一つの理想の生き方ですね。

そういう意味では、家事・育児・仕事の両立に悩んだり、仕事上の人間関係に悩んだり、身体的にも精神的にも余裕がなく疲れたりしている現代人にこそ響く内容ではないでしょうか。

外伝の方でも郵便社の女性たちが「これからは女性ももっと働く時代が来る」みたいな話をしていたシーンがありました。

その伏線を回収してくれたのだと思っています。

(島の人との関係もよいと思ったポイントでした。

最初、閉鎖的な感じなのかと思ったら皆優しくて暖かい気持ちになったのを覚えています)


◆(名)脇役たちの葛藤

これもよかったです。

特に印象深いのはアイリスです。

表情豊かで魅力的なキャラですね。

ヴァイオレットに対して劣等感を抱きながらも変にいじけず、何とか自分の中で折り合いをつけていくところがよかったです。

「現在」どうなっているのかはっきりは描かれていませんが、おそらく出てきましたね。

自分だけの小さな居場所を見つけたということでしょうか。


あとは大佐ですね。

ヴァイオレットと二人で船の中で色々探していたときの空気感がヤバかったです。

アニメであそこまで表現できるのかと。


◇クライマックスシーン

もう、これは本当に凄かったです笑

宣伝のポスターがなぜ水辺だったのかもわかりましたし、進化して帰ってきた「みちしるべ」があまりにも素晴らしすぎました。

元の曲が昔の街とかMVに出てきた草原や庭とかのイメージなのに対して、今回のはリバーブのかかり具合のおかげか海の波を感じるサウンドになっている気がしました。

なぜ、あなたの「声」が道しるべなのか。

改めて歌詞がいかに完璧か知りました。


以上です。

また何か思い出したら付け加えるかも。

2018年8月25日土曜日

【アニメ映画】【小説】ペンギン・ハイウェイ 私が個人的に映画以上に原作小説をおすすめする理由


森見登美彦さんの作品を紹介するのは【小説】【アニメ】四畳半神話体系/森見登美彦に続いて2作目になります。

ちなみに私は今のところ映画は見てません。そのうち見るつもりですが。

テレビCMの印象だけで本編を勝手に想像してます。

というわけで、映画と比較するというより、いかに原作が素晴らしいかについて語ります笑 

以下いつも通りネタバレ多め↓ 

 小説の特徴

まずはタイトル通り書いてみます。一応ですが。

独特の一人称の語り

映画でもある程度再現されているとは思うのですが、やはり本一冊となると文章の量と内容の濃さで圧倒してくる感じがあります。

四畳半神話大系などほかの作品では、主人公は主に男子大学生。名前は明かされず、「私」とだけ出てきて、脳内で屁理屈ばかり言っている。

それに対してペンギン・ハイウェイはかなり異色です。

主人公は男子小学生のアオヤマ君、ヒロインは近所の歯科医院のお姉さん(ヒロインに関しては微妙に通常運転っぽさあります)

しかも、男子大学生の主人公と違って凄く純粋だし希望にあふれてます。

でも、読み進めていくうちに、大学生と根本は変わらないというか、同じように引き込まれて行きます。

観察眼の鋭さとたとえのうまさが特徴なんじゃないかなと思います。

ペンギン・ハイウェイでは缶がペンギンに変わる瞬間を観察記録的に詳細に描写したり、お姉さんの寝顔を見て不思議な気持ちになって心の中で悶々としたり、そもそも小説全体が少年の日記という設定だったり。(本当にこんなに文章を書いたら恐ろしい小学生ですね)

まず、最初からいきなり自分がいかに努力しているか、素晴らしい小学生かについて語り始めちゃってます。

個人的にここの文章が最も好きです。プロローグみたいなものです。

このプロローグは章として区切られているわけではなく、「ここまではためし書きである」という一言によって唐突に終わります。

ここらへんで「え、何なのこの子?! やっぱりただものじゃないな」みたいになります。

自分の住む街について、お菓子みたいなカラフルなかわいい家がたくさんあると言い、将来自分がどれだけえらくなっているか想像がつかないと平然と言い切り、お姉さんが作り出す動植物の細かな描写、登場人物たちの見た目のユニークな紹介、クラスの意地悪な子にひどい目に遭わされているときでさえ冷静に観察と分析をし、...と挙げるときりがないです。

映画でもそういうのは見られるとは思うのですが、小説がそれのフルバージョンということになると思います。


それと、印象に残っているのは小学校のクラスでの人間関係ですね。

小学生にしてすでに四角関係(?)かなんかになっているのですが、アオヤマ君はちょっと疎いので、皆の態度をこれまた詳細に書いた上で、なんでなのかわからないなんて言ってますからね。

普通の人なら表情や態度で何となく読み取って終わり(=作品の登場人物に関しても、映像で見た方が伝わる)のに対し、アオヤマ君はここでもしっかりした文章にして考察したがるので、小説で読んだ方がニヤニヤできます。多分。

登場人物の名前、表記など

アオヤマ君というのを見ればわかると思うのですが、この話の登場人物は全員カタカナで書かれ、下の名前が一切出てきません。

このカタカナ表記がファンタジーっぽさを強めてくれてます。

小説でしかわからない一番の特徴かもしれないですね。

ちなみにお姉さんに至っては苗字すら明かされません。

やっぱり名前がない方が感情移入できるんだなあと再認識しました。

大学生の作品では、主人公のしがない生活に感情移入するのがメインだから主人公の名前が明かされてないし、ペンギン・ハイウェイではアオヤマ君のお姉さんへの憧れが原点としてあるからそれを強調している、みたいな。


それに加えて、これは森見登美彦さんの作品全般に共通することなのですが、文章が途切れるところでただ1行とか2行空けるのではなく、なぜか○を入れます。

これ、意味わからないんですけど落ち着く気がして好きです。

一息つけるんですね。


 内容を考察してみる

いつも通り好き勝手に書きます。 

こっちの方が長くなりかねない笑

お姉さんは何者で何を考えているのか

アオヤマ君は〈海〉を世界の壊れた部分で、お姉さんとペンギンはそれを直しに来たと考えています。

あれな言い方ですが、世界はプログラムで、お姉さんはデバッカー、ペンギンはデバッグ用プログラムって考えるとなんかわくわくします笑

あとは、お姉さんは日曜に教会に通っていて、アオヤマ君と「神様を信じるか」みたいな会話をしているシーンがあるので、神の使いのようなものなのかもしれないとも思います。



一番の謎はお姉さんがなぜ自分の正体を知らないか、ですね。

知っているのに知らないふりをしている感じも特にしないし。

それに、お姉さんは自分の子供のころの記憶を持っています。

考えられるのは、

・地球で一時的に暮らすために記憶・人格を与えられている
・実際に幼い頃から普通に生活していた人間であるが、壊れた世界を直す人として選ばれてしまった

のどちらかかな。

最後にはいなくなってしまうし、話の中での流れも前者の方がそれっぽいですね。

どっちにしても日常の中のファンタジーからは大きくかけ離れてしまうので、答えが明かされることはないんだろうなあ…と思います。



お姉さんが何を考えているのかについては、原作を読んだ小学生の時からずっと気になってます。

改めて読み返してみると、辛そうにしてる場面多いですよね。

〈海〉が小さくなると体調が悪くなるという設定のせいでもありますが、〈海〉を壊すために自分の地球上での生を犠牲にしなければならないなんて辛くないはずがないです。

特にラストでカフェでぼーっとアオヤマ君を待っている場面。

この時になって初めて、人間とは分かり合えない寂しさや、その中でアオヤマ君だけが自分を理解してくれていることをお姉さんが本当に自覚したような感じがします。

序盤、中盤とずっとアオヤマ君の片想いっぽいのに、最後でお姉さんも精神的にアオヤマ君に頼ってたんだな、と気づかされます。

アオヤマ君の成長

先ほど紹介したプロローグは、エピローグでもほとんど同じ文章のまま使われます。

だからこそちょっとした変化、特にラストの何文かが凄くきわだって見えます。


アオヤマ君は頭がいいのですが、最初の方では頭でっかちな面があります。

お姉さんやクラスメイトとの唯一無二の体験の中で、実際の体験と文章は全く違うということを学んでいき、たくさん書いているノートの中ではなく現実に生きる少年になっていきます。

だから映画だと後半の方が映像とアオヤマ君のセリフが合ってきて盛り上がるんじゃないかな。

超個人的には、原作の表紙みたいにアニメっぽくないタッチで、前半は静止画多めでラジオドラマみたいな感じにして、後半でアニメ!!っていうのを押し出したような映画を見てみたいです。


愉快な脇役たち

大きく、変人とまあまあ普通の人に分けられる気がします(適当)

変人→アオヤマ君、アオヤマ君のお父さん、お姉さん、ハマモトさん
普通の人→ウチダ君、スズキ君たち、アオヤマ君のお母さんと妹

みたいな。

特に、スズキ君→ハマモトさん→アオヤマ君→お姉さんとかいう一方通行の恋愛相関図(?)が存在するので、中立的なウチダ君がめちゃめちゃバランスとってくれてます。(逆にそれ以外のみんなのキャラが濃すぎる)

ハマモトさんはお姉さんに嫉妬しているせいで「あの人信用できない」とか言い出すし笑

ただ、大人の恋愛と違ってドロドロしてないし、小学生のノリというか、ほほえましいです。


 まとめ

四畳半神話体系と比べてほぼこっちでは書いていませんが、森見さんのストーリーの特徴はアホワールド(?)と言われていて、登場人物たちが基本的に頭がいいのに知性を無駄遣いしていることです。

大学生主人公だと、大学生の間しかしないようなバカ騒ぎとかになるのですが、ペンギン・ハイウェイでは小学生らしい純粋で懐かしいエピソードに全振りしているので爽やかなテイストになってます。

私は文庫本を持っているのですが、あの小さくて密に詰まった字を見ているとなんだか宝物に触れている気分になります。

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