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2021年2月12日金曜日

佐井好子1stアルバム『萬花鏡』(1975)全曲レビュー

なんで書いてるのか自分でもわかりません。
が、しかし、偶然この凄すぎる女性シンガーソングライターを発見してしまったので曲についてつらつら書いていきます。
そもそもネット上に情報がなさすぎるのでもし興味を持った方がいらっしゃったらこの記事が確実に上位に出てくるでしょう(適当)
20代が書いているので当時の時代背景、空気感がわからず至らない部分があるかと思いますがご了承ください。

歌詞:https://mojim.com/jph116512.htm


歌詞が載ってない曲もありますが、このアルバムの曲は全部載っているっぽいです。



1.夜の精

さりげない曲のようでめちゃくちゃ凄いです。
マイナー調とメジャー調を行ったり来たりするところとか。
そして歌詞のなかなかの妖しさ。
間奏のヴァイオリンも美しいです。
昼間の街を狂った街と表現しているところに厭世観を感じます。
あと、「あの娘」を少し遠くから眺めているような、でもギリギリ私=あの娘と解釈できなくもないような距離感が秀逸です。

2.冬の地下道

最初にちょっと叫び声みたいなのが入っててびっくりします。
そしてASMR風の(?)パーカッション。
題名通り冬の地下道そのものを歌っているのが凄い。
心情を表す言葉もないし一人称も二人称も三人称も出てこない。
暗い景色の中で青い海や空を夢見て途方に暮れている。

佐井さんは基本女性の目線から歌詞を書くのでとりあえず女性を想像すると、なんとなく黒いトレンチコートを着てそう。
男性だと仮定するとまた違う趣がありますが。

3.逢魔が時

一部分で出てくるシンセの音は当時としては斬新だったのではないかと思います。
あとベースラインが存在感強い。お気に入りです。

最初は歌詞の意味がわからなかったのですが、理解してめちゃくちゃびっくりしました。
これは凄い。表現が色っぽい。
空の赤みとか枯れ落ちる花というのは、比喩であると同時に、佐井さんがインタビューで答えていた「女の原風景」なのかなと思います。

1番。
「帰りを忙ぐ ひとときを」が凄い。急に現実感のある歌詞になるから。
個人個人の記憶の中のそんな場面がふっと思い出されますね。

2番。
圧倒的にすべての言葉が凄い。
「逢魔が時」に、「愛しあえない淋しさ」に「夜を恐れて」と続く歌詞にびっくりしました。
なんというか、ただ淋しいから夜が恐いのではなく、どこか相手に申し訳ない気持ちが込められているように勝手に思ってしまったんです。
冷静に考えたらそうではないのかもしれないけど、そう思ってしまいました。
それくらい行間に不安が込められている気がする。

3番。
「おとなしすぎる安らぎ」ってフレーズってつまりそういうこと?
今月もある種何もなく終わったわ、ということ?

なんか1~3番が全員別の女性について歌っているようにも聞こえるんですよね。不思議な感覚です。

4.恋した人へ

具体的な状況はわからないのですがなんとなく共感してしまっている自分がいました。
恋が終わったら街を出ていくわけです。
未練が残っているというか、燃えるような感触がまだ残っているかのような、夢うつつの状態というか。

幻の4番があるみたいですが、それによると本気で好きなわけじゃないけど大人の恋がしたいから、ということらしいです。
なるほど。だいぶイメージが湧いたぞ。

ごく個人的には、付き合っていると思っていた人にいきなり「結婚するから」と別れを告げられたのではないかと思ってます。
いやでも、わがままって何だろう。難しい。

語彙力がないので大雑把な言い方をしますが、「辛い!ひどい!!」という歌ではなく「あーあ……」みたいな歌ですよね(多分)

5.椿は落ちたかや

使っている楽器からして凄い。
とにかく和。ここまで純度の高い和の世界を感じる曲は滅多に出会えないと思います。
左側から三味線、右から鼓の音が聞こえてきます。
多分物の怪が存在してます。
一人称が「あたい」というところも惹かれます。

この歌、解釈に迷ったのですが、母から子への愛だと捉えてます。
複数曲で母と娘(子)の確執みたいなものが書かれている中で、実はこの曲だけ例外なのではないか?と。

そう捉えると2番の歌詞が幻想世界であると同時にリアルな情景描写に見えてきます。
揺れる血の海に流れつき、やがて逆さづりになる…。
当時まだ一般的でなかったはずなのですが、灰色うごめくというのがエコー写真を表現しているとしか思えない…。
もしかしたら全く違うのかもしれないのですが、私はそう解釈しています。

6.酔ひどれ芝居

これはコメントが難しい。
なんというか世界が完成されすぎていて。
古い日本であると同時に非現実の街の世界だと思っています。さらに、ロマを思わせる部分もあるかも、と思ったり。

7.紅い花

ここまで歌詞がわかりやすい歌は多分これと次の二十才になればくらいです。
かあさんが赤飯を炊いていた日の歌です。
でも「あたし」はつばきの花が欲しいと。
椿は落ちたかやと同様、椿が似合いますね。
歌詞っていろんな花が出てきがちですが椿というのもまた独特で味があります。
花がそのままの形で散るのが生々しく思えたり…。

この曲、聴けば聴くほど当時の日本で発表されたという事実がとんでもない奇跡ではないか?と思ってしまいます。

8.二十才になれば

この歌詞を聴いて衝撃を受けない人っているのか…?と思ってしまうくらいの歌詞。
万人におすすめできる曲ではないですが、私としては若者ほどこの曲を聴け!と言いたい。

めちゃくちゃ過激なことを言っているとかそういうわけではないのですが…
タバコの件からして今の時代には絶対生まれない歌詞ですね。

さらに、今だったら二十才になったら結婚、という発想をしないですね。(実際結婚する人もいるけど。)

でも、時代は変わっても人は簡単に変わらないんですよ。

私は20歳を過ぎてしまいましたが、この歌詞の中の女性に対してめちゃくちゃ共感する部分があります。

生物としての自分だけを考えるともうそろそろ結婚している気がするのに、現実の社会はそういう感じじゃない。肉体と精神、自然と社会(対義語ではない気がするけど)の乖離を感じる。

歌詞の中の女性はきっと本当に20歳で結婚するんだろうけど、私はこれに似た想いを抱えたまま叶えられずに年老いていくのだ…という、歪な聴き方をしてしまいます。
(リアルな話をすると28までには結婚したいです。
でも、誰々が結婚した年を過ぎてしまったんだなあ…とか思うことはあります)

今の女性の方が幸せな部分も、昔の女性の方が幸せな部分もどっちもあると思っています。
だからこそ、この歌の中で自分の人生が幸せかどうかみたいなことが一切書いておらず、淡々と緊張しているのが伝わってくるところが好きです。
自分とは違う境遇の人間に感じる緩やかな共鳴に心がすっと落ち着きます。

…個人的な思いが強めになってしまいましたがこんな感じです。

9.雪女

どんな人生を送っていたらこんな色っぽい歌詞が書けるようになるんでしょうか…
夢野久作の影響なのか…?
「おまえ」は雪女、そして語り手は誘い込まれる男の一人。

よく聴くと笛の音とか色々入っているんですね。
恐らくアルバム中で、コーラスを含めると最高音を歌っているのはこの曲のはずなので、ある種のクライマックスなんですよね。
佐井さんの高音は本当に美しい。
高音コーラスの後の間奏部分も変化があって好きです。

10.見果てぬ夢

他の曲よりも明るくてエンディング感があります。
…が、歌詞はなかなか凄まじいことを言っています。
あ、でもよく考えたらこれは佐井さん流ラブソングなのではないだろうか?
そう考えるとこの曲調に納得がいくような。

これを最後の曲にするのセンスの塊すぎますね…。



曲のメロディとかアレンジについても書こうと思ったのですが、ほとんど歌詞についてばかりになってしまいました。
このアルバムに関してはアレンジはそこまで幅はないかな…?という感じです。次のアルバムから曲の幅が広がっていくんですね。

しかし難しい。つたない文章ですが読んでくださった方ありがとうございます。

2020年2月19日水曜日

昔買ったkalafinaのベストアルバム'Blue'の全曲にコメントしてみる


◆Blue
1. storia 

これは聴いたことがある人も多いと思います。
幼心に(?)何か凄い歌だな~と思ってました。
歴史秘話ヒストリアのBGMはこれの変化バージョンみたいなのが多くて、映画のメインテーマとその派生みたいな感じなのが好きです。
kalafinaにしては短め。

2. 君の銀の庭 


まどマギの劇場版の歌。

最初にMagia(4曲目)の方を知っていたので最初聴いたとき

え?明るすぎない?

と思ったのですがよく聴くとちゃんと歌詞が合っている(微妙に怖い)という。


3. red moon 


これ、なんでRedの方に入れなかったんだろう…と思ってしまった曲。


「恋に落ちて~」がサビだと個人的には思う(というか印象に残って好き)のですが、実はBメロみたいな感じでその後別のサビが出てくるという贅沢な仕様。聴けばわかります。しかもめちゃめちゃ長いのに飽きさせないそしてタイトルそのものが音に凄く合ってます。

この曲のせいで6月の月に対して赤いイメージができてしまいました笑

4. Magia 

storiaの次に知った曲だと思います。
まどマギの雰囲気にあいすぎててびっくりしたのを覚えています。
そして、歌詞がストーリーに沿ってほぼ解釈できるということにまた感激しました。(当時はあまりそういうのを知らなかったので…)

歌はもちろん、間奏、後奏がとんでもなくカッコいいです。
Lacrimosa, red moon, ARIAとかに近い雰囲気がありつつ、また別のロックとクラシックの融合という感じ。(正確にはクラシックというか教会音楽の影響を受けてるらしいですね…)


5. seventh heaven

激しい曲の後に落ち着ける曲。
よくわからないけど冬の冷たさがストレートに伝わってくるような曲と音です。
長い曲(6分超)のわりに繰り返しのメロディが少なく、歌詞よりもメロディとアレンジでストーリーになっている感じ。


6. signal

曲らしい曲が始まるまでになんと30秒かかっている曲。
力強い曲、激しい曲は他にもありますが、攻撃的な曲はこれくらいだと思います。
しかも、他人への攻撃ではなく内省的に、自分の内側に牙を向ける感じ。


7. 夏の林檎

最初「柿なの?向日葵の〜」と言っているのかと思って思わず歌詞を確認した曲です。(正しくは 垣根の〜 です。)
アコギのゆるやかな音が登場する林檎とかレモンにあってます。

他と比べると現実的な印象を受ける曲で、サビからは実在している女性が夏の日に優雅に帽子を被って風に当たっているような(?)情景が浮かびます。
林檎が何かの比喩なのか、そのものなのか考察してみたかったですがよくわからなかったです。

8. sprinter

これもそれなりに激しい曲。この辺は交互になってますね。


1分50秒あたりからの展開がすごいですね。転調の仕方が安定の綺麗さ。
全体で見てもかなり変則的な構成になっています。

9. I have a dream

梶浦さんが参加していたSee-Sawというバンドの曲みたいですね。
たしかに、歌詞を読むと他とは違う感じを受けます。
もしかしたら夜行列車に乗って上京しているのかもしれませんね。

10. 未来

Cメロとそのあとの間奏が大好きな曲。もちろんサビがあってこそなんですけど、Cメロでしっかり変化することでメリハリがつく感じ。

これもまどマギ関連の曲です。
儚い希望を表している感じがします。(本編のストーリーを知っているとなおさら…)

11. 満天

凄く激しい曲というわけではないのですが、サビのメロディの作り込まれた美しさ、間奏でサビのメロディがヴァイオリンのソロで繰り返されるところ、転調の仕方、Aメロからサビまでの流れ、どれを取っても完成度が高く疾走感があります。

一つ驚きなのが、サビのメロディが、ヴァイオリンのソロで再現されているところを含めると、4種類のキーで登場するところです。

特に「安らぎのあると人の言う」のところで一度低くなるのが好きです。しかもこのフレーズは古文とか漢文の文章にも出てきそうで想像が膨らみます。

12. snow falling

静かな曲。ラストに向けて一休みという感じ。

13. to the beginning

最後の方にこのタイトルの曲を持ってくるのは偶然かもしれないけどやっぱり狙っていると思います。
疾走感と繊細な美しさを両立させた独特な曲です。

14. symphonia

最初、なぜこの曲が一番最後なのか疑問だったのですが、これも歴史秘話ヒストリアで使われていたと知って納得。(1曲目も歴史秘話ヒストリアの曲なので)

さらに、タイトルと歌詞を見ると、音楽への明るい肯定を表していて、選曲の妙を感じました。

Red編→https://hana00000.blogspot.com/2020/01/kalafinared.html


2020年1月17日金曜日

昔買ったkalafinaのベストアルバムRed'の全曲にコメントしてみる


◆Red


1. prelude 

始まりの1曲。歌詞はついていますがインスト曲みたいな感じに捉えているのでノーコメント。

2. misterioso

1曲目からうまくつながっている感じがします。わりと明るめ。
kalafinaにしてはアップテンポかも。




3. 光の旋律

イントロは異国情緒あふれる感じ、Aメロ、Bメロと次第に明るくなっていく感じです。

そしてサビで転調&一気に明るくなります。 
メロディのせいか一定の高さのまま空を飛んでいるようなイメージを感じます。

2番ではサビに入らず、一度間奏に入るのですが、そのリードがセンスありすぎる。生演奏独特の音のわずかな外れ方というか。

さらにCメロで転調しAメロに戻るのですがすべてが違和感なくつながっていて美しいです。


4. Lacrimosa

よく見るとそれなりに珍しく(?)頭文字が大文字ですね。

kalafinaの中でトップ3に入る好きな曲です(ただし全部好きなので順番は選べない)

全体を通して凄い曲なのですが、特にBメロとサビが圧倒的に印象的に残ります。

ラスサビの最初のところで、エッジの効いたベースから入ってLacrimosa~と謳いだすのですが、そこだけ妙に流暢に歌っていて日本語の「泣き申せ」と空耳できるのが個人的に好きです。



5. ARIA

kalafinaの曲の中で一番好きかもしれない。強すぎる。

メロディも歌詞もすばらしいです。声も、高音成分が多いけれど聞き苦しくはない、ギリギリのラインを攻めた感じがカッコいいです。

「伽藍のこの胸」「伽藍の世界」というワードにまず衝撃を受けたのですが、どうやら音楽が使われたアニメからとっているようですね。

ラスト、
激しいドラムとリズムをずらしたコーラスに合わせて、その他の音は薄めのBメロ
→一度静かになる
→サビ
→音数を減らしてさらにもう一度サビ
という構成がまた衝撃でした。

6. 輝く空の静寂には

大好きな曲3連続。
旋律が2種類(サビとAメロ?)しかなくて4分以上の曲なのに全く飽きさせないところがさすがです。

1番と2番の間のコーラスとリードが世界を広げています。めずらしく造語がはっきりと聞き取れて、意味がないのかもしれないけど意味をつけたくなってしまう。

7. moonfesta

あらゆる意味で異色な曲。みんなのうたで使われたというのを見て納得。
音が凄くよい。

サビ以外が短調、サビが長調(同主調)の曲って予定調和みたいな気がしてしまって基本的にはあまり好きではないのですが、この曲こそその構成にふさわしいのではないかという気がします。
さらに、2分~2分40秒くらいのサビが変則的になっていて、一瞬短調っぽくなるのもきれいです。

歌詞も他とは違う少女趣味といった感じです。

8. ひかりふる

この中では休憩的な曲です。

全員の声が生きた曲です。というかKeikoさんの声がこんなに全面に出てくる曲はベストアルバムの中でもないような(適当です)

中盤から静かに曲がドラマチックな展開をしていきます。


9. oblivious

コーラスが低音から高音まで最強すぎる曲。
さらにドラムが他の曲よりも攻撃的というか重低音というか電子系の曲でも使えそう感じで、かっこよく仕上がっています。

サビ自体はkalafinaにしてはスタンダードなメロディなのですが、特に2回目で不協和音スレスレなコーラスが入ることによって不思議な浮遊感と絶望感、意志を感じます。


10. 音楽

あまり詳しくないのですが初期の曲のようで、その事実に対してめちゃめちゃ腑に落ちてしまった、いい意味で荒削り感のある曲です。

音楽というタイトルなのに音楽性を破壊しても構わないとまで思っていそうな気迫すら感じてしまいます。(歌詞もメロディもアレンジもそんな感じ)

11. consolation

終盤になってこういう曲がくる恐ろしさみたいなのがありますね。
サビはアップテンポで普通に好きな曲調といった感じなのですが、時々歌詞とアレンジで攻撃性をのぞかせてきます。
終わりのコーラス何か特に鬼気迫っています。

12. 胸の行方

おそらく前の曲から連続で聴いた人は皆思うと思うのですが、
え?これ同じ人が作ったの…?(困惑)みたいな。
非の打ちどころのない明るく温かい曲といった感じです。


13. 夢の大地

明るい曲2連続。こっちの方がさらに温かい感じです。



14. Eden

転調が美しい曲。

ループして聴くと最初と上手くつながります。

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