冴えない大学生が、もっと自分には別の可能性があったはずだ、と模索し続け、最後になってやっと自分の現状を受け入れ、楽しむようになる、という物語です。
登場人物について簡単に。
主人公です。
名前は出てきません。
同じ作者の『恋文の技術』では、主人公「私」の名前が森見登美彦(作者名)となっているので、ここでもそう考えてよいかもしれません。
地の文では「私」という一人称を使っているのに、喋るときはほぼ「俺」になっているのも一つの特徴です。
何となく、紳士になりたいのになれない(?)感じが伝わってきます。
不毛な生活を送る人たち
主人公の悪友である小津、8回生と言われている樋口師匠、主人公いわく「水もしたたるイイ男」であるにもかかわらず映画サークルに居座り続ける、師匠と同学年の城ヶ崎氏の3人です。
小津は樋口師匠の弟子で、樋口師匠と城ケ崎氏は自虐的代理代理戦争という謎の争いをしています。
一つだけ言えるのは、皆成績が超低空飛行だし将来の希望が見えないのに、堂々と楽しそうにふるまっているということです。
明石さん
大して出てきませんが、本作のヒロインです。
こんな女の子、実際の大学にそうそういないですね。
孤高を貫いているのに、主人公には意外な一面を見せてくれます。
かわいいしかっこいいし最高!!
羽貫さん
謎の歯科衛生士だそうです。樋口師匠や城ケ崎と同じ学年の卒業生らしく、要所要所で登場します。
主人公の心を惑わせてきますが、(多分)樋口師匠とくっついてます。
そういえば、今度映画化される『ペンギン・ハイウェイ』のお姉さんも歯科衛生士ですね。
作者の森見登美彦さんが思い入れを持っているんでしょうか。
小説とテレビアニメの違い
本作では主人公が自分の生活に納得するまでに、いくつものパラレルワールドを体験します。(違う解釈もできそうですが、客観的に見てそれが一番近そうです)
小説では全部で4回なのに、アニメでは1話~10話の10回、大学入学から話が始まります。
それにあたって(?)、毎回の結末が若干変更されていて、最終話だけ原作に沿った終わり方をしています。
以下いつも以上のネタバレなので白字→原作だと4回とも明石さんと恋仲になるのに、アニメだと最終話だけなんですね。
個人的にはテレビアニメの方が好きです。
ラストの特別感が増すので。
逆に言えば最後まで見ないと(というか途中を飛ばしてでも10話11話を見ないと)良さがわかりにくいんじゃないかなと。
それ以外にも、いくつかアニメでしかできない演出をしています。
登場人物の顔の変化とかは特に秀逸です。
「私」と小津の関係について
「私」は自分と小津とは運命の黒い糸で結ばれている、一緒にいると自分がダメな人間になってしまうから早く縁を切りたいといったことを言っていますが、最後に唯一の親友であったことに気づきます。
いくつものパラレルワールドを通して、様々なサークルに入ったり樋口師匠の弟子になったり…と一通りの経験をした「私」ですが、小津はそれらを一発ですべてこなしています。(だからこそどんなルートを選んでも小津と出会ってしまうわけですね)
対照的な描かれ方をしているのが面白いです。
最後に、「私」はやたらと嘆いていますが、正直こんな大学生活を送ってみたいです!(自堕落なところ以外)