2019年8月18日日曜日

島本理生『あられもない祈り』について考える


普段適当なノリでゲームの話ばっか書いてますが、こうやって思い出したようにセンチメンタル(?)な話を書いていくスタイルです。

色々規約に引っ掛かりそうな内容なのでオブラートに包んで書いていきます。


※結論から言いますと、自分が子供すぎて色々無理でした(成人してるけど) 支離滅裂なのは気にしない。そもそもそういう物語だ(※誉め言葉です)

・女性登場人物について

一応同僚はいますが、ほぼモブとして登場しているだけなので、
実質主人公の他に母親と「彼女」しかいません。

本のレビューとか見ててもこの主人公には女性の友達がいないのか?みたいなのがあったりします。まったくその通りです。
そこで、そこら辺について考えていきます。


まず、母親は非常に重要です。
作中で主人公は同性の体が苦手と言っていますが、少なからず原因は母親のはずです。
仕草一つにも寂しさを滲ませ、フラフラと恋愛に依存してしまうにも関わらず、自分が女であることをどこか否定しているのです。

母親=女の嫌な部分であり、潜在的に母親と同じものを持つ自分をどこかで冷静に自覚し、母親に対して同族嫌悪を抱いています。
もしも「あなた」と暮らしてしまったら、「私」は母親と同じ道をたどっていたかもしれません。

自分を愛せないから、同性である女性を好意的に見ることができないのではないかと思います。

逆に、「彼女」は「私」や母親とはある意味対極にいる存在なので、物語の最後に雰囲気が「彼女」っぽいな、と思う人物を電車で見かけても、当たり前ですがそういう思考には至りません。

ただ、自分も「彼女」もお互いに意識し合っていたことに思いを馳せます。


・父親について

私は個人的に、女性が精神的に安定するために一番大切なのは、幼少期に父親に愛されていた記憶があることだと思います。
主人公がこれほど不安定なのは、ある意味父親のせいだと思うわけです。

物語の中で深く描写されているのは母親の方だし、確かに母親を意識しているんだけど、この父親の存在がずっと流れている感じ。



・全体の流れ

改めて見返してみたのですが、



三年前「あなた」を振る
→「あなた」の婚約を知る&再会する
→母親と話しているときに直樹との結婚を提案される
→「あなた」の別荘に行ったのをきっかけに仲を深める

→直樹と色々あった中で「あなた」への好意に気づく
→直樹と別れて「あなた」と付き合う
→「私」から別れを切り出す
→直樹が来る
→結局「あなた」と別れる

という流れになってます(雑すぎるあらすじ)。

…あれ?もしかして直樹がいなかったらかなり違う行動してたんじゃない?…っていう。

「あなた」がいなくても直樹と別れていただろうし、直樹がいなくても「あなた」と付き合っていたかもしれないけど、明らかに2人への感情が相互に影響し合った結果として行動しています。


特に直樹と別れた後、本当はしばらく期間があったように思いますが、文章が簡潔なのでノーモーションでいきなり「あなた」の元に転がり込むように付き合い始めているように錯覚してしまいます。

そして、別れへの一連の流れ、「彼女」の存在が圧倒的に大きいのはもちろんですが、「あなた」も結構直樹に嫉妬しているよなあという。

「あなた」本人からしたら正しいことを言っているつもりなのですが、客観的に見ると嫉妬です。自覚がない分怖いんです笑


あと気になったのが、文庫本だとp.107のところで、一回だけ「あなた」が「彼」になるんです。


自主規制)なシーンなのですが笑、だからこそあえて変えているのかもなあと思います。もしかしたら深い意味なんてないかもしれないけど。


・ラストシーンとその後

「私」はラストで目を覚ましました(「あなた」の存在によって自分に目覚めました)。「あなた」の周りの状況や精神状態を、自分がどうにもできないことをただ受け入れ、「石の体に戻ってしまいそう」と言いながら生きていくことに決めました。

「あなた」とこの後復縁するかどうかはわかりませんが(個人的にはしないと思います)、「私」(主人公)のなかでは感覚的に「あなた」と再会するビジョンも見えています。
ただ、わかっているのは、もう、他の人と軽い気持ちで恋愛はしないだろうということです。

案外、こんなことを言っていてもさらっと結婚相手を見つけるかもしれない、だけどそれは論理的に考えてただ選ぶだけ。
「あなた」を愛しているからこそ他の人に抱かれても構わない、だけどもう何も感じない。



「あなたは私の中の海をさらっていってしまった。それは一生あなたのものだ。」

(本文より引用。文庫本ではp.163)


物語後半になるにつれて印象的なフレーズが増えていきますが、その中でも一番の名言だと思います。

私の中の海ってなんやねんっていう。
だけど女性なら誰でも持っている(あるいは持っていた)んじゃないかと思います。

肉体感覚と連動する細かな精神の波みたいな。



・最後にその他色々

私はこの話を中学生で読んで(しまって)、当時は今以上に何言ってるのかわからなかったし、恋愛ってそんな恐ろしいものなのか...?と考えさせられたりしました。

何が凄いって、シチュエーション的には何一つ共感できないのに、なぜか主人公の感情に対して「あーわかる…」ってなってしまうことです。

これが、解説の西加奈子さんの「恋愛する個々ではなく恋愛そのものを書いている」ということなのかなと。


 
名前を呼ばれるたびに、私は逃げるように目を閉じた。

(文庫本p.108より)

これですよこれ。
名前を呼ばれたくないって冷静に考えて恐ろしくないですか?

そしてこの文の直前の、「一度も微笑まなかった」もかなり怖いです。



ストーリーを楽しみたいのではなくただ深い世界に浸りたい方、どうぞ。

島本さんの他の作品(『生まれる森』)の感想的なやつ↓

0 件のコメント:

コメントを投稿

新着記事

すみすみ ステージ240 攻略 (エリア12) すごい旗を立ててクリア

  エリア12では 缶入りクッキー 🍪が登場。 今回はその最終ステージ、ステージ240の攻略を書いていきます。 私自身はエリア12はすべて旗を立ててクリア済みなので、 すごい旗を立ててクリア を目指してみました。(ビッグスイーツが2つになる) ということで...

Topics